RTK-GNSSはリアルタイムに誤差数センチメートルの高精度位置測位を実現できます。高精度位置決めを必要とする分野で広く活用されています。よく耳にしたGPSはGNSSの一種として 、RTK-GNSS技術を指す場合、RTK-GPS技術を使用するのが一般的です。
GNSSとは
GNSSとは、Global Navigation Satellite System(全地球航法衛星システム)の英語表記の略であり、1つまたは複数の測位衛星から構成された測位システムです。全地球衛星系((Global Constellation))、地域衛星系(Regional Constellation)、衛星型補強系(Satellite-Based Augmentation)に分類されます。
GNSSは、宇宙から地球上全ての地域または特定の地域に測位(Positioning)、航法(Navigation)、時刻同期(Timing)を送信します。これはPNT信号とも呼ばれます。宇宙にある衛星から電波信号をGNSS受信機に送信し、この電波信号で位置を決定することができます。
GNSSとGPSの違いとは?
GPSはGNSSの一種です。米国のGPS、ロシアのGLONASS、欧州のGalileo、中国のBeiDouの4つの衛星システムがあります。
名称 | GPS | BeiDou / BDS | Galileo | GLONASS |
所有 | 米国 | 中国 | 欧州 | ロシア |
通信方式 | CDMA | CDMA | CDMA | FDMA & CDMA |
信号精度 | 0.3–5 m | 3.6 m | 1 m | 2–4 m |
これに加えて、インドの NavIC (IRNSS) や日本の QZSS などの特定の地域に特化した測位衛星もあります。
GNSSシステムの仕組み
GNSSはスペースセグメント「衛星」、コントロールセグメント「地上局」、およびユーザーセグメント「受信機 (GNSS または GPS 」の3つの主要なセグメントで構成されています。
スペースセグメント
スペースセグメントは衛星で構成されています。 GNSS コンステレーション内の各衛星は、時刻、軌道、ステータス情報を提供できる信号をブロードキャストします。 具体的な機能は次のとおりです。
1. 地上監視局から送信された航行情報を受信し、保存します。 監視局の制御命令を受信し、実行します;
2. 高精度なセシウム原子時計とルビジウム原子時計が搭載されているため、正確な時刻を提供します;
3. 位置情報をリアルタイムでユーザーに送信します;
4. 地上監視局の指令に従い、衛星姿勢を調整します。スラスターで待機衛星の起動などをします;
5. 衛星に搭載されたマイクロプロセッサーが、必要な情報処理作業の一部を行います.
コントロールセグメント
コントロールセグメントは、主制御局、アップロード局、監視局からなる地上ネットワークです。 具体的な機能は以下の通りです:
1. 各衛星を追跡、観測、情報を収集します。軌道パラメータ、時計パラメータ、大気の補正パラメータなどを算出します.
2.軌道から外れた衛星を調整し、必要に応じて待機衛星を起動します.
3. すべての地上監視システムを調整・管理し、時刻基準を提供します.
ユーザーセグメント
ユーザーセグメントはGNSS受信機を指します。GNSS受信機はアンテナとプロセッサの2つの部分から構成されます。アンテナは衛星信号を受信します。プロセッサは衛星情報を緯度や経度などの一般的に使用される測定値にデコードします
GNSSの用途は?
現在、正確で継続的な位置と時間の情報を必要とする様々な分野でGNSSは使われています。 これらの分野には、農業、輸送、機械制御、船舶航行、車両航行、移動通信、スポーツなどが含まれます.
GNSSテクノロジーは資材の効率と運用コストの最適化を可能にし、環境への配慮から労働者の安全まで、様々な付加的利益をもたらします。
RTKとは?
RTK(リアルタイム・キネマティック)とは、GNSS測位の精度を上げる技術です。 GNSS受信機は、衛星から受信機まで信号の到達時間を測定しますが、 送信された信号は電離層と大気を通過し、その途中で遅延や干渉を受けますので、 GNSS受信機は2~4mという低い精度でしか位置を計算できません。
RTKはこの問題を解決できます。 より高い精度が必要なアプリケーションに対し、2cmまでのセンチメートルレベルの精度をユーザーに提供することができます。
RTK 種類
RTK補正信号には、固定基地局からの無線RTK信号とインターネットからのネットワーク型RTK信号の2種類があります。
固定基地局
基地局は座標が既知の地点(基準点または事前校正点)に設置されます。 基地局はGNSS受信機に補正信号を送ります。 さらに、複雑な統計的手法を用いてこれらの信号の位相を調整し、測位精度を2cm以下に改善できます。
NTRIP
NTRIP方式には、安定したインターネット接続と、全国または地域ネットワーク用の固定基地局インフラストラクチャを備えたローカル NTRIP サービスプロバイダーへの加入が必要です。
NTRIPの主な利点の1つは、RTK測位に必要となる基地局が幅広く設置しておりますので、使用範囲の制限がないことです。固定基地局から10km以上離れている公道テストにも問題がございません。しかし、ネットワーク信号が弱くて、NTRIPサービスが利用できない場合は、固定基地局が不可欠となります。
RTKの使用範囲は?
測量、精密農業、ロボット工学、オートメーション、鉱業、自動車、海運、鉄道、航空宇宙(UAS)産業など、センチメートルレベルの精度を必要とするあらゆるアプリケーションには、RTK技術が導入された可能性が高いです。
FJDynamics関連製品
FJD AT2 農機自動操舵システム
FJD AT2農機自動操舵システムは、GNSSとRTKを利用して、あらゆる地形において±2.5cmの操作精度を実現しています。
FJD G31 3D Excavator Guidance System
3D ショベルガイダンスシステムは、GNSS+RTK技術を使用し、±3cmの精度を達成できます。これによって、デジタル建設に適用されます。
FJD V1 測地GNSS受信機
FJD V1 測地GNSS受信機は無線RTK信号を提供できます。
References
1. Bernhard Hofmann-Wellenhof, Herbert Lichtenegger, Elmar Wasle, "GNSS — Global Navigation Satellite Systems", springer.com.
2. Paolo Dabove, Mattia De Agostino and Ambrogio Manzino, "Achievable Positioning Accuracies in a Network of GNSS Reference Stations"", intechopen.com.
3. "Other Global Navigation Satellite Systems (GNSS)", gps.gov.
4. "Satellite Navigation" , wikipedia.org.
5. Ahmed El-Mowafy,Curtin University, Australia, "Precise Real-Time PositioningUsing Network RTK", intechopen.com.